食中毒とは、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着した食品や有毒・有害な物質が含まれる食品を食べることによって起こる健康被害のことを言います。
多くの場合、頭痛、発熱のほか嘔吐、腹痛、下痢等の胃腸炎症状を起こします。まれに腎臓障害や呼吸麻痺等を起こし死亡するケースもあります。
食中毒は原因物質によって、細菌性食中毒、ウイルス性食中毒、寄生虫による食中毒、自然毒による食中毒、化学物質による食中毒に分類されます。
現在、食中毒の大部分は細菌やウイルスを原因とするもので、食べ物の味、臭い、色は変化しません。
なお、食中毒は体力のない(抵抗力が弱い)乳幼児や高齢者において重症化する傾向があり、注意が必要です。
● 福島県内の食中毒発生状況(福島県食品生活衛生課ホームページへ)
カンピロバクター・ジェジュニ/コリサルモネラ属菌腸管出血性大腸菌病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌以外)腸炎ビブリオ黄色ブドウ球菌ボツリヌス菌セレウス菌ウエルシュ菌ノロウイルスA型肝炎ウイルスE型肝炎ウイルス
細菌・ウイルス名 | 原因食品 | 特徴 | 症状(潜伏期間) | 予防のポイント |
カンピロバクター・ジェジュニ/コリ | ・肉類及びその加工品、二次的にカンピロバクターに汚染された食品 | ・家畜、家きん類の腸管の中に生息し、食肉(特に鶏肉)や井戸水を汚染・少量の菌量で発症する。 | ・発症までの時間:1~7日と長い・症状:腹痛、激しい下痢、発熱、吐き気等 | ・調理器具の洗浄・消毒・生肉と調理済食品と区別して保管・手指の十分な洗浄・消毒・食肉は中心部まで75℃で1分間以上の加熱、生食を避ける。・井戸水の確実な消毒 |
サルモネラ属菌 | ・卵、またはその加工品、食肉、ウナギ、スッポン | ・動物の腸管、自然界(河川、下水など)に広く分布・食肉と卵を汚染することが多い。 | ・発症までの時間:12~48時間・症状:激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐等・長期にわたり保菌者となることもある。 | ・調理器具の洗浄・消毒・肉や卵は10℃以下の低温保存・生肉と調理済食品と区別して保管・手指の十分な洗浄・消毒・食肉は中心部まで75℃で1分間以上の加熱、生食を避ける。 |
腸管出血性大腸菌 | ・牛肉、牛レバー刺し、ユッケ、ハンバーグ、浅漬け、シカ肉等、二次汚染されたサラダや野菜 | ・主に牛の腸管にいる細菌。牛の糞などを介して牛肉やその他の食品、井戸水等を汚染・少量の菌量で発症・ベロ毒素を産生し、出血性腸炎や溶血性尿毒症候群を引き起こす。 | ・発症までの時間:3~8日・症状:初期症状は下痢、発熱、重症化すると激しい腹痛と血便、溶血性尿毒症候群や脳症を発症する場合もある。 | ・食肉は、十分に加熱し、生では食べない。・焼肉の場合は、生肉をとる箸と食べる箸を区別する。・調理器具の洗浄・消毒・食肉や卵は10℃以下の低温保存・生肉と調理済食品と区別して保管・手指の十分な洗浄・消毒・生野菜の十分な洗浄・井戸水などの消毒と衛生管理 |
病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌以外) | ・家畜や患者・保菌者などの糞便に汚染された食品、飲料水など | ・大腸菌は家畜や人の腸内に存在しほとんどのものは無害、いくつかの大腸菌は、人に対して病原性があり、これらを総称して病原性大腸菌と呼ばれている。腸管出血性大腸菌以外に4種類のタイプに分類されている。 | ・腸管病原性大腸菌:12~72時間 下痢、腹痛・腸管侵入性大腸菌:1~5日 赤痢様症状(血便、腹痛、発熱)・毒素原性大腸菌:12~72時間 水溶性下痢、腹痛、嘔吐、・腸管凝集性大腸菌:12~72時間 2週間以上の持続性下痢、腹痛、発熱 | ・生野菜などはよく洗浄し、食肉は中心部まで75℃で1分間以上加熱してから食べること。・加熱調理済食品が二次汚染を受けないよう、調理器具や手指は十分に洗浄・消毒する。・水道水以外の水を使用する場合は、年1回以上の水質検査を受け、飲用に適しているか確認すること。・ビルなどの貯水槽の清掃・点検を定期的に行う。 |
腸炎ビブリオ | ・魚介類と魚介類から調理器具などを介して二次汚染された食品 | ・腸炎ビブリオは、海水域に分布するため、3%程の塩分を好み、真水や熱に弱い。海水温の上昇とともに増殖し、近海産の魚介類についている。低温に強く、熱に弱い。他の菌より増殖が早い。 | ・発症までの時間:通常6~24時間程度・症状:腹痛、下痢、発熱、吐き気 | ・魚介類は、低温(10℃以下)で保管する。・魚介類は、水道水でよく洗浄して調理・魚介類専用の調理器具を用意し、使用後は十分に洗浄・消毒し、二次汚染を防ぐ。・調理後は、速やかに食べる。 |
黄色ブドウ球菌 | ・おにぎり、弁当、洋生菓子 | ・黄色ブドウ球菌は、人の皮膚、鼻、喉頭などに常在する。食品中で 増殖する時に産生された毒素(エンテロトキシン)を食品とともに摂取することにより、黄色ブドウ球菌食中毒が発生する。菌自体は熱に弱いが、毒素は熱に強く、通常の加熱では壊れない。 | ・発症までの時間:30分~6時間(平均3時間)・症状:吐き気、おう吐、腹痛が主症状、下痢を伴うこともあり、一般に高熱はでない。 | ・手指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れたり、調理したりしないこと。・手指の洗浄・消毒を十分に行う。・食品は10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐ。・調理にあたっては、帽子やマスクを着用する。 |
ボツリヌス菌 | ・いずし、缶詰、びん詰、容器包装詰食品(特にレトルト類似食品)等 | ・ボツリヌス菌は、土壌、河川、海など自然界に広く分布し、食肉、野菜、魚介類などを汚染する。酸素が無い状態で発育し、強い毒素を産生する。・耐熱性の芽胞を形成する。 | 発症までの時間:8~36時間・症状:初期には嘔吐や下痢などの胃腸炎、ついで視力障害や嚥下障害など神経麻痺症状が現れる。さらに重篤の場合は呼吸困難に陥り死亡する場合がある。 | ・真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭があるときは絶対に食べない。・家庭で真空パック、びん詰め、「いずし」等をつくる場合には、原材料を十分に洗浄する。・食中毒の直接の原因であるボツリヌス毒素は、80℃30分間の加熱で失活するので、食べる直前に十分に加熱すると効果的・乳児ボツリヌス症の予防のため、1歳未満の乳児には、「はちみつ」を食べさせるのは避ける。 |
セレウス菌 | ・嘔吐型:ピラフ、スパゲティ等、チャーハン・下痢型:弁当、プリンなど | ・土壌などの自然界に広く生息する。この細菌は、耐熱性の芽胞を形成する。・この菌による食中毒には嘔吐型と下痢型がある。 | ・嘔吐型/発症までの時間:30分~6時間・症状:吐き気、嘔吐・下痢型/発症までの時間:8~16時間・症状:下痢、腹痛 | ・一度に大量の米飯やめん類を調理し、作り置きしない。・穀類等が原料の食品は、調理後保温庫で保温するか、小分けして速やかに低温保存(8℃以下)すること。・なるべく早く食べる。 |
ウエルシュ菌 | ・肉類、魚介類、野菜を使用した煮込み料理(カレー、シチュー、スープ、麺つゆ)など | 人や動物の腸管や土壌、下水など自然界に広く生息する。酸素のないところで増殖する菌で、耐熱性の芽胞をつくる。 食物とともに腸管に入った菌は、芽胞を形成する際、毒素をつくり、この毒素が食中毒を起こす。大規模食中毒を起こすことがある。 | ・発症までの時間:6~18時間(平均10時間) ・症状:下痢、腹痛 |
・前日調理を避け、加熱調理したものはなるべく早く食べる・一度に大量の食品を加熱調理したときは、長時間室温放置せず、この菌の発育しやすい温度(10℃~60℃)を長く保たないよう注意する。・食品を再加熱する場合は、十分に加熱する。 |
ノロウイルス | ・水やノロウイルスに汚染された食品、特にカキを含む二枚貝が多く報告されている。 | ・ノロウイルスは、人の小腸粘膜で増殖するウイルスで、急性胃腸炎の原因ウイルスである・冬期のウイルス性急性胃腸炎の大部分が、ノロウイルスによって起こっている。・感染ウイルス量は、100個以下の極めて少量で感染する。人から人へも感染する。 | ・発症までの時間:24~48時間・症状:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱 | ・カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱(85~90℃ 90秒以上)・生鮮食品は(野菜、果物等)は十分に洗浄する・トイレの後、調理をする際、食事の前に手指の洗浄・消毒する・手洗いの後、使用するタオル等は清潔なもの(ペーパータオル等)を使用する・調理従事者の健康管理(症状がある場合は食品を直接取り扱う作業に従事しない。) |
A型肝炎ウイルス | ・A型肝炎ウイルスに汚染された水や食品(井戸水や二枚貝が感染源として推定されている事例がある。) | ・A型肝炎ウイルスは、人の肝臓等で増殖し、胆汁経由で糞便中に排出され、飲料水又は食品を汚染し人に感染する。 | ・発症までの時間:2~7週間(平均4週間)・症状:下痢、発熱、吐き気、嘔吐、倦怠感、黄疸、肝腫大等 | ・トイレ後、調理前、食事前には十分な手洗いと消毒を行う・A型肝炎の常在地域となっている国や地域では生水を飲まない。・よく加熱した食品を食べる。 |
E型肝炎ウイルス | ・E型肝炎の常在地域では、水が主な感染経路と考えられている。・国内では、豚、イノシシ及びシカなどから抗体が検出されており、これらの食肉のが原因となるおそれがある。 | ・感染経路は経口感染であり、E型肝炎ウイルスに汚染された食物、水等の摂取により感染し、肝臓にウイルスが移行し、肝臓で増殖する。・E型肝炎の治療方法は、現在のところ急性期の対症療法しかない。 | ・発症までの時間:3~8週間(平均6週間)・症状:発熱、吐き気、腹痛、黄疸、肝腫大等・特に妊婦では劇症化しやすいため注意が必要 | ・豚レバーをはじめ豚、イノシシ肉については、生で食べず加熱調理の際には中心部まで十分に加熱する・これらの食材の調理時に皮膚の傷からウイルスが入らないように注意する。 |